研究課題/領域番号 |
10671654
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
研究分野 |
眼科学
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研究機関 | 杏林大学 |
研究代表者 |
樋田 哲夫 杏林大学, 医学部, 教授 (40129622)
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研究分担者 |
寺木 祐一 杏林大学, 医学部, 講師 (10188667)
藤原 隆明 杏林大学, 保健学部, 教授 (20096259)
塩原 哲夫 杏林大学, 医学部, 教授 (10118953)
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研究期間 (年度) |
1998 – 2001
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研究課題ステータス |
完了 (2001年度)
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配分額 *注記 |
3,400千円 (直接経費: 3,400千円)
2001年度: 700千円 (直接経費: 700千円)
2000年度: 700千円 (直接経費: 700千円)
1999年度: 600千円 (直接経費: 600千円)
1998年度: 1,400千円 (直接経費: 1,400千円)
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キーワード | アトピー性皮膚炎 / 網膜剥離 / 白内障 / 硝子体手術 / リンパ球 / 平滑筋アクチン / アポトーシス / 平衡筋アクチン / サイトカイン / IL-4 / Interferon-γ |
研究概要 |
背景:アトピー性皮膚炎に伴う網膜剥離や白内障が本邦では増加傾向にある。失明に繋がる本症は若年者に多く患者自身の生涯に大きく影響する問題である。しかし、本症の発生機序の解明、治療法の改善は重要な課題であるが、確立しているとはいえない。本研究の目的は、(1)アトピー性皮膚炎に伴う網膜剥離の疫学的動向と臨床的特徴の把握(2)硝子体手術や白内障手術の現状の問題点の評価(3)術中に採取する眼組織の病理学的検討(4)網膜剥離や白内障を合併するアトピー性皮膚炎の免疫学的異常の特徴を検討することである。 結果:網膜剥離手術を多数施行している33施設からのアンケート調査による多施設全国調査を検討した。初回手術を施行し術後6か月以上経過観察した348例417眼が報告された。反復して眼瞼を強く擦る、叩くなどの行為が発症原因として大きく関与している可能性やその他の臨床的特徴について従来からの報告を確認する結果となった。初回手術として、78%が強膜バックリング,22%に硝子体手術が行われ、初回および最終復位術は75.3%,92.6%と不良であった。杏林アイセンターの網膜剥離や増殖硝子体網膜症の硝子体手術成績から、後部硝子体剥離作製の完成の有無が長期予後に影響することが示唆された。網膜剥離症例の89%に白内障を合併し、網膜剥離の診断が遅れる原因ともなった。白内障の手術を契機に網膜剥離が発症、悪化することもあり、手術手技および白内障手術の周術期の眼底検査が重要であることが確認された。後発白内障抑制の検討から、眼内レンズのシャープエッジが後発白内障を抑制するが、その機序はエッジと後嚢の間に発生する高い接触圧による機械的遊走抑制であり、挿入後に形成される鋭利な嚢屈曲は高い接触圧のマーカーではあるが、それ自体には遊走抑制効果はないと考えられた。アトピー性皮膚炎に伴う網膜剥離や白内障の発生機序に関して眼内の免疫学的異常の影響を探るため、手術中に採取した硝子体液や結膜組織のサイトカインの特徴的な発現を検討したが、一定の結果が得られなかった。しかし、アトピー性皮膚炎患者の抹消血リンパ球中にはIL-4やIL-13を産生するTh2細胞が増加しており、その多くがCLA陽性細胞であることを示し、IFN-γを産生するTh1,Tc1細胞はむしろCLA-分画に多いことを示した。一方、末梢血中のIFN-γが増加していた。これらの結果は、アトピー性皮膚炎におけるサイトカインのアンバランスや炎症部位への細胞遊走がアトピー性皮膚炎の病態に重要にかかわっていることを示唆し、網膜剥離や白内障を有する臨床例や動物モデルの眼内のT細胞の動態を検討することは、今後の治療の開発にも重要であると考えられた。
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