研究概要 |
活動性ぶどう膜炎患者の硝子体中の炎症性メディエーターを測定し、非活動性ぶどう膜炎およびぶどう膜炎の既往のない患者の硝子体液を対照とし比較解析した。対象のぶどう膜炎の内訳は急性網膜壊死,サイトメガロウイルス網膜炎,サルコイドーシスなどであった。硝子体上清中のサイトカイン,ケモカイン,可溶性接着分子,可溶性レセプターおよびリガンドなどの測定はELISA法で行った。また,前房水にはアポトーシス機能があることが報告されており,硝子体でも同様の機能が存在するのかどうかを実験的自己免疫性ぶどう膜炎モデルを用いて硝子体の滲出細胞と眼固有組織のアポトーシス細胞,Fas, Fas ligandの発現を経時的に比較解析した。結果は,活動性ぶどう膜炎の硝子体サンプル中のIL-6,IL-8,IFN-γ,sTNF-R1,2,MIF,MIP1β,sFas, sFas ligand, sICAM-1, s-selectinなどはいずれも対照と比較し有意に高値を示した。また,疾患によって硝子体中のサイトカインプロフィールは異なり,急性網膜壊死ではIL-6,IL-10,IFN-γ,サルコイドーシスではIFN-γ,悪性リンパ腫ではIL-10などが有意に高値を示した。一方,ぶどう膜炎患者の硝子体およびぶどう膜炎の既往のない硝子体(黄斑円孔)のいずれも眼局所由来T細胞に対してアポトーシスを誘導した。EAUでは前房と硝子体中のリンパ球のアポトーシスが炎症の最盛期に一致して最も多くみられ,毛様体の固有細胞のFas ligandの発現とリンパ球のアポトーシス細胞の出現動態は一致していた。以上の結果より,活動性ぶどう膜炎の硝子体中には炎症を促進する種々の炎症性メディエーターが高濃度に存在するがFas-Fas ligandシステムを介した炎症抑制機構も同時に存在することが確認された。ぶどう膜炎患者に対する硝子体手術は炎症を促進する種々の炎症性メディエーターや抗原の貯蔵所となっている硝子体を除去することによりぶどう膜炎の活動性を抑制するのではないかと推測された。
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