配分額 *注記 |
3,700千円 (直接経費: 3,700千円)
2000年度: 1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
1999年度: 1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
1998年度: 1,700千円 (直接経費: 1,700千円)
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研究概要 |
ヒトレニンプロモーターとヒトアデノウィルス12型のE1A-E1B融合遺伝子をヘテロにもつトランスジェニック(TG)マウスを作製したところ、87%もの高頻度で特異的にPNETが発生した。発生のピークは生後21-40週で、PNET発生部位は20週齢までは腹部、骨盤部、四肢、体幹、それ以降は脳・頭骨内に集中した。脳・頭骨内および一部の骨盤部発生PNETはmedullo-ependymal rosetteを形成し、その他は未分化な末梢型PNETであった。融合遺伝子のE1A、E1B遺伝子タンパクはそれぞれ癌抑制遺伝子タンパクpRb、p53と結合してその働きを抑制する。p53遺伝子ノックアウトマウスに化学発癌物質のエチルニトロソウレア(ENU)を経胎盤投与すると,脳に特異的にglioblastomaが発生したとの報告があり,p53の機能抑制の可能性がある我々のTGマウスでENUの腫瘍発生修飾効果を調べたが,ENUを投与してもglioblastomaは全く発生せず,ENU投与の有無でPNETの発生時期,種類,組織型に変化は見られなかった。したがって、TGマウスにENUを投与してもpRBおよびp53の機能は抑制されず、発癌とENUの作用は独立した事象であると考えられた。細胞周期のG1で働くcyclinD1はCdk4と結合してpRbをリン酸化し、G1/S期移行を促進する。また、p21遺伝子はp53の転写誘導を受け、cyclinD1/Cdk4複合体に結合することでキナーゼ活性を阻害し、細胞をG1期で停止させる。TGマウス発生PNETのcyclinD1およびp21の遺伝子発現をreal time定量RT-PCR法を用いて調べた結果、cyclinD1の発現がきわめて強く抑制され,p21遺伝子発現はマウス神経芽腫細胞のほぼ1/2であった。TGマウス発生PNETではE1A遺伝子の高発現によりpRbの働きが阻害され、p16-cyclinD1-pRBのシグナル経路はpRBだけの変異でもはや機能しなくなったものと思われた。TGマウス発生PNETはヒトのPNET/Ewing肉腫とは分子遺伝学的に異なっているが,E1A,E1B遺伝子が共に高発現してpRbおよびp53の作用を阻害し、S期進行の異常とアポトーシス誘導関連遺伝子の異常を引き起こしており、我々のTGマウスは発癌機構解明に極めて重要な材料を提供すると考えられる。
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