研究概要 |
1.培養系神経芽腫細胞を用いたインテグリン発現度の検討 1)分子生物学的検討 ヒト神経芽腫細胞株6株とPNET株1株を用い,半定量的ウエスタンブロット法によりインテグリンβ1の発現度を測定検討した。β1サブユニットはSK-N-SH,SK-N-MC,IMR32,NB1で比較的強く発現し,SK-N-DZ,NB39では発現が減弱していた。PNET株では両者ともほとんど発現していなかった。発現度は,N-myc増幅株で若干減弱する傾向は見られたものの,今回の実験ではN-myc増幅度との間には明らかな関連性は見られず,カドヘリンの発現とも明らかな相関は見られなかった。 2)免疫組織化学的検討 培養細胞をメタノール固定した後,抗インテグリンβ1抗体を用い,蛍光抗体法による免疫組織化学的検索を行った。SK-N-SH,SK-N-MC,NB1ではほぼ全部の細胞の細胞質で発現していたが,SK-N-DZ,IMR32,NB39では発現が減弱しており,PNET株ではほとんど発現していなかった。 2.臨床材料での検討 凍結保存してある臨床材料のうち進行神経芽腫7例とマススクリーニング2例のインテグリンβ1発現度をウエスタンブロット法で測定し,臨床所見と比較した。マススクリーニング症例と比べ,進行神経芽腫ではインテグリンの発現が減弱する傾向にあったが,stage,病理組織所見,N-myc増幅度,TRK-A発現度との間に明らかな関連性は見られなかった。進行神経芽腫の転移巣は1例のみ検討したが,インテグリンβ1が強く発現していた。
|