研究概要 |
神経損傷後の神経修復術に関して、損傷から修復術までの期間、神経の縫合回数、神経移植の段階数が結果に与える影響について検討した。 実験1.時期の検討 ラット脛骨神経を下肢中央部で切断し,再び切断部を縫合した。縫合の時期を切断直後から3ヶ月後まで変化させた。 実験2.再縫合の検討 ラット脛骨神経を下肢中央部で切断し、再縫合した。閉創後、待機期間(1〜3ヶ月)をおいて開創し、同一部位で切断し、再縫合した。 実験3.神経移植法の検討 ラット脛骨神経を切断し,切断端間に長さ1cmの同側腓腹神経を移植した。A群では、一期的に縫合し、B群では、近位部のみ縫合し,遠位部は1ヵ月後に縫合した。各実験(n=10)とも対側を対照として、2ヶ月の時点で組織学的、電気生理学的な評価を行った。 (結果) 1.時期の検討 誘発電位の出現率は、3ヶ月後縫合群で有意に減少した。筋収縮力は3ヶ月後縫合群では対照の1/5以下にまで減少した。有髄神経線維数において、3ヵ月後縫合群での減少が特に顕著であった。 2.再縫合の検討 誘発電位は3ヶ月後再縫合群でも80%という高い出現率を示した。筋収縮力は3ヶ月後再縫合群でも32%を保ち、2ヶ月後再縫合群との間に大きなgapを生じることはなかった。 3.神経移植法検討群 誘発電位出現率は一期的神経移植群では60%、二期的神経移植群では50%と差を認めなかった。筋収縮力、有髄神経線維の数・直径、筋湿性重量、筋線維直径とも両群の間に有意差は認めなかった。 (結論) 1.神経縫合を、受傷後3ヶ月を過ぎて行うと、機能回復が著しく不良であった。待機期間としては2ヶ月以内が望ましい。 2.脱神経性萎縮の防止法としての一時的神経縫合は、3ヶ月以上神経再生が遅れる場合に有用である。 3.神経移植における一期的縫合と二期的縫合との間に有意の差は見出されなかった。
|