研究概要 |
CD14はLPSの誘導する様々な宿主反応を惹起する重要なLPS結合受容体の1つである.この研究の目的はLPS侵襲によって誘導される歯周組織破壊におけるCD14の役割を調べることである.実験1:ラットCD14のアミノ酸26-45,262-278,309-327に対応する3種類の合成ペプタイドを抗原とし,モノクロナール抗体(RCD14)を作成した.PLP固定-EDTA脱灰凍結骨切片に対しl/500希釈濃度のRCD14抗体を用いて免疫組織化学的染色を行った結果,骨髄内の多数の顆粒球,単球が強陽性を,骨内面を覆う扁平な骨芽細胞が弱陽性を呈した.実験II:実験Iで確立した方法を用い,未処置ならびにLPS投与後のラット辺縁歯周組織におけるCD14発現を調べた.歯肉接合上皮(JE)部では好中球,マクロファージなどの浸潤細胞,JE細胞の一部がCD14強陽性を,歯根膜部では骨芽細胞,骨細胞,セメント芽細胞に加えマラッセの残存上皮が弱陽性を呈していた.なお,血管内皮細胞も陽性を呈した.LPS投与により歯肉接合上皮部ではCD14の染色性が増強すると伴に,1〜3日にかけてCD14陽性好中球やマクロファージが増加した.実験III:RCD14抗体を12時間おきに4回腹腔内に前投与しLPS投与した後,3時間ならびに3日目にみられる辺縁歯周組織変化を抗体非投与のものと比較検討した.(1)JE直下における血管拡張・浮腫・炎症細胞浸潤等の炎症反応は抗体投与により抑制された.浸潤好中球・マクロファージ数は有意に減少していた.(2)歯根膜部では,LPSによる破骨細胞増加が抑制され,特にLPS投与3日目で顕著であった.(3)LPS投与後みられた宿主細胞におけるTNF-α,MIP-2の一過性の発現は抗体前処理症例では観察されなかった. 以上,CD14受容体は浸潤細胞や歯周組織構成細胞にも発現され,LPS侵襲により辺縁歯周組織に惹起される炎症反応や歯槽骨吸収に重要な役割を果たすことを明らかにした.
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