研究概要 |
Stephylococcus epidermidisが産生するプロテアーゼを精製し,その生化学的性状の検討,および同遺伝子のクローニングを行った.精製プロテアーゼの分子量はSDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動で27kDaであった.酵素活性の至適pHは8.0で,Z-LLE-MCAを特異的に加水分解した.N末端アミノ酸配列26残基と,相同生が認められたS.Aureus Glu-特異的セリンプロテアーゼ遺伝子配列をもとにして,S. epidermidis ATCC14990株ゲノムDNAより12,143bpのDNA配列をクローニングした.プロ酵素は282アミノ酸残基,推定分子量は30,809で,66残基のシグナル配列を有し,成熟酵素の推定分子量は23,580であった.検討したいずれの培地でも液体培養ではプロテアーゼの産生は見られず,一方,寒天培地を用いた透析膜状培養によってのみバイオフィルムの形成と一致した発現が認められた.このことから,本プロテアーゼ(GluSE)はS. epidermidisのプラスチック表面への接着機構に関与する可能性が考えられた.サザンプロット解析により本遺伝子の1コピーが染色体DNA上に存在することが示された.さらに,口腔由来コアグラーゼ陰性staphylococci(CNS)を含むCNS臨床分離株についてGluSE遺伝子の保有状況をPCRで検討した.その結果,S. epidermidis分離株の本遺伝子の保有率は100%(65/65)であり,うち72.3%(47/65)の分離株がGluSEを産生した.一方,S. aureusとS.capitis, S. Haemolyticus, S. hominisおよびS. warneriを含むCNS株には遺伝子の保有を認めなかった.以上の結果からGluSE遺伝子はS. epidermidisに種特異的に存在することが示唆された.
|