研究概要 |
本研究は,身元不明死体の個人識別にとって重要な情報の一つである年齢を,経年変化をする骨の内部構造からより正確に推定しうる方法を確立することを目的としている。一般に,20歳以前の年齢推定には口腔領域の特徴が利用され,その有効性が述べられている。一方、20歳以降で通常検査される形質は最も年齢と相関があると思われる骨の骨梁の形態である。そしてその方法として薄切試料の軟X線写真による二次元的な観察が行われている。しかしその結果は,個体差が大きく信頼性に欠けるという報告が多い。つまり、20歳以降については客観的で確実性をもった推定方法というものが未だ存在しないということである。そこで本研究では,まず従来の二次元的な観察方法をマイクロCTを用いた三次元的なものに変え,骨梁密度の計測も三次元的に行った。その結果,マイクロCT装置が年齢を推定しうる画像を得る方法として適していること,また三次元画像を用いた計測値も信頼性が高いことが確認された。次に年齢推定に有効な骨部位を検索することを目的として,まず下顎骨および第三腰椎の骨梁構造と年齢との関係を調べたところ,下顎骨についてはその内部構造の変化は加齢よりも機能に大きく影響を受けることが観察された。そこで次に,年齢既知の第三腰椎を用いてその二次元的な骨梁構造および単位体積あたりの骨梁の体積率と年齢との相関を検討したところ,20歳以前と30歳代から50歳代,70歳代の間において肉眼的にもまた計測学的にも有意な差が認められた。しかし,3歳,12歳,21歳の各年代,33歳、41歳、54歳の各年代においては差が認められず,また後者では骨梁が増加しているという所見が得られた。これは,試料数が各年代1例と少ないために生じたものと考えられ,今後例数増やすとともに四肢骨など他の部位についても検査し,本研究目的を達成したいと考えている。
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