研究概要 |
ラット頭蓋冠由来骨芽細胞様株細胞であるC26細胞は筋細胞や脂肪細胞への分化能を保持する骨芽細胞の前駆細胞で,recombinant(rh)BMP-2投与によってより成熟した骨芽細胞への分化が促進される。そこで,平成10,11年度において,ラット頭蓋冠由来骨芽細胞様株細胞であるC26細胞にrhBMP-2(0.5μg/ml)を添加し,3,6,9日間にわたってそれぞれ培養し,細胞分化に伴うdecorinとbiglycanの遺伝子発現をNorthern blot法によって検討した。また,細胞分化に伴うalkaline phosphatase(Alp)活性値の測定も行った。さらに,rhBMP-2によって細胞分化を誘導した細胞にそれぞれTGF-β1(0,0.1,1.0,5.0,10.0ng/ml)を添加し,24時間培養し,decorin, biglycanの遺伝子発現およびAlp活性を同様に検討した。 【成績】rhBMP-2添加によって,3,6,9日間培養した細胞のAlp活性値は非添加群と比較すると,それぞれ約1.8,3.7,5倍に有意に増加したが,decorinの遺伝子発現はいずれも著明に抑制された。しかしながら,biglycanの遺伝子発現には有意な変化が認められなかった。さらに,rhBMP-2添加によって分化を誘導した細胞の培地からrhBMP-2を取り除き,TGF-β1を投与すると,濃度依存性に,これらの細胞のdecorinの遺伝子発現は顕著に抑制されたが,biglycanの遺伝子発現は影響を受けなかった。また,rhBMP-2を除去またはTGF-β1の添加によって,いずれの細胞のAlp活性値は減少した。 【考察および結論】C26細胞にrhBMP-2投与によって誘導された細胞分化の促進に伴い,Alp活性の増加とdecorinの遺伝子発現の減少が認められたが,biglycanの遺伝子発現は有意な変化を示さず,一定であった。一方,TGF-β1は,分化過程にあるこれらの細胞に対して,Alp活性とdecorinの遺伝子発現を抑制するが,biglycanの遺伝子発現には影響を与えなかった。以上のことから,BMP-2とTGF-β1は,骨芽細胞の分化の様々なステージにおいてdecorinの遺伝子発現を抑制するが,biglycanの遺伝子発現に対しては作用が異なると考えられた。
|