研究概要 |
近年,体性感覚神経線維又はその細胞体中に多数の神経活性物質が同呈されてきたが,それらの機能については未だに推測の域を出ない.本研究はニューロンの機能的種類により受容体機能の発現が異なることを示すことを目標とした.本研究では麻酔ラットを用いて視床へ投射する,またはintrinsicな単一ニューロンの無髄線維入力に由来する反応に対するsubstance P受容体等のantagonist灌流の効果を調べた.さらに,慢性炎症動物についても,それらの動物モデルを作成して調べ,正常動物と比較した.さらに,NK-1受容体antagonist (RP67580)による抑制と下行抑制の効果を調べた. その結果,大部分の非投射ニューロンのC反応はNK-1受容体拮抗薬では抑制されたのに対して,視床投射ニューロンの大部分はそれらのC反応はNK-1受容体拮抗薬では抑制されなかった.C3迄投射していたが視床には投射していないニューロンは抑制を受けた.KA,AMPA,NMDA受容体拮抗薬はC反応を消失させたが,少数ではあるが耐性のあるニューロンもあった.慢性痛動物の1層ニューロンの性質は正常動物と比して有意な差異はなかった. さらに,大縫線核刺激によりC放電が抑制された27個とされなかった8個のニューロンを選びNK-1受容体antagonistの効果を調べると,抑制されたもののうち24個はRPにより抑制された.一方抑制されなかったものうち6個はRP耐性であった.そして両者の抑制の大きさの間には相関が見られた. 以上の結果はNK-1受容体とserotonin系下行抑制の正の相関を示すものである.現在この機能的意義について検討している.これらの研究は,近年多数見い出された神経活性物質について機能的意義の解明が進展させた.
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