研究概要 |
静脈麻酔薬であるプロポフォールおよびケタミンのGABA_A受容体機能増強作用を行動薬理学的手法を用いて検討した.実験動物としてddY系成熟雄性マウスを用い,薬物は全て腹腔内に投与した.麻酔作用は正向反射の障害や消失を指標に4段階の採点法により評価した.GABA_A受容体作動薬であるムシモールはプロポフォールの麻酔作用を用量依存性に増強した.GABA_A受容体拮抗薬であるビククリンはプロポフォール麻酔を用量依存性に抑制した.興奮性アミノ酸受容体作動薬であるNMDAやカイニン酸はプロポフォール麻酔に影響しなかった.一方,ケタミンの麻酔作用は,プロポフォールの麻酔作用と同様ムシモールにより増強され,ビククリンにより拮抗されたが,GABA神経終末のGABAを枯渇させるL-アリルグリシンによっては影響を受けなかった.しかし,ケタミン麻酔はNMDAにより抑制され,NMDA受容体拮抗薬により増強された.以上の結果より,プロポフォールの麻酔作用はGABA_A受容体機能増強作用と関係しているが,興奮性アミノ酸受容体とは関係しないことが示唆された.一方,ケタミンの麻酔作用はGABA_A受容体機能増強とNMDA受容体拮抗の両方の作用が関係していることが示唆された.現在は,GABA神経に及ぼす全身麻酔薬の影響を脳マイクロダイアリシス法を用いて検討しており,この研究により全身麻酔薬のGABA神経への作用部位がより明確になるであろう.
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