研究概要 |
ラット耳下腺から得られたmRNAを用いてRT-PCRを行い,低分子量GTP結合タンパク質、Rab4およびRab26が強く発現している事を確認した。耳下腺腺房細胞の細胞分画に対するwestern blottingの結果,Rab26およびVAMP2(vesicle associated membrane protein 2)は,分泌顆粒膜上に存在するが,Rab4は細胞膜上に存在する事が明らかとなった。腺房細胞をisoproterenol(IPR)で処理したところ,VAMP2は分泌顆粒膜には存在しなかったが尖端膜近傍の顆粒膜に存在し、Rab26のシグナルは消失した。免疫組織化学法によっても同様にRab26は耳下腺腺房細胞の分泌顆粒膜に存在し,また,IPR処理によって分泌顆粒膜から消失する事が確認された。このことは,耳下腺唾液分泌における分泌顆粒の移動にRab26が何らかの関わりを有することを示唆した。他方、Rab4の細胞内輸送における役割を明らかにするためにその分布について精査したところ、細胞質、intracellular membranes(ICM)、基底膜および尖端膜に存在することが明らかとなった。また、腺房細胞をIPRやカルバコール(Cch)で処理するとRab4がICMから細胞膜画分へ移動することから細胞内輸送への関与を強く示唆した。Rab4のグルコース輸送体(GluT)との関わりについて検討したが、GluTを選択的に確認する抗GluT抗体の調整が不調に終わり残念ながら一時pendingとした。現在、唾液腺細胞に存在する水チャンネルであるaquaporin5の輸送との関わりについて検討中である。他方、ラット耳下腺腺房細胞mRNAに対するRT-PCRから、耳下腺にはrabphilin3は存在しないことを明らかにした。IPRによる分泌に細胞内Ca濃度の変化を伴わないことは、耳下腺では神経細胞やchromaffin cellなどCa動員によって膜融合に至る分泌機構とは異なった機構が存在すると考えられることから、PRAを介する分泌機構を検証中である。
|