研究概要 |
本研究の目的は,活性酸素種によるα-受容体を介した血管平滑筋収縮反応および内皮細胞依存性弛緩反応の抑制効果に,propofolがどのような影響をおよぼすかを明らかにすることにあった.平成11年度の研究成果を踏まえ,平成12年度に行った研究概要と成果を以下に示す. ペントバルビタール(50mg/kg,i.v.)麻酔下に放血致死させた雄性白色家兎(New Zealand White)より上腸間膜動脈(O.D.,1.5〜2.0mm)を摘出し,輪状標本を作成した.同一の標本から作成した4個のリング標本を10mlのKrebs-Ringer液を満たした4連の臓器槽(37℃)中に各々0.5gの静止張力を負荷して懸垂し,60分後に実験を開始した.血管反応の観察は4個の標本についてパラレルに行った.一連のシリーズの実験でノルエピネフリン(NE)1μMによる収縮反応,アセチルコリン(ACh)1μMによる弛緩反応を1個の標本で連続4回(T1,T2,T3,T4)観察した.過酸化水素(H_2O_2150μM)と硫化第二鉄(FeSO_4,100μM)からなるフェントン反応を5分間血管標本に作用させた場合の影響とプロポフォール(1,10μM)の保護効果を検討した.また,フェントン反応に用いたと同濃度のH_2O_2による影響と,これに対するプロポフォールの効果についても同様のプロトコールを用いて解析した.内皮細胞依存性弛緩反応に対する影響を検討した実験では,インドメタシン(5μM)存在下でNE前収縮による張力を一定にした後,AChによる弛緩反応を観察した. H_2O_2およびフェントン反応によるルミノール化学発光とこれに対するプロポフォールの影響をフォトンカウンティング法により検討した.また,スピントラップ剤として5,5-dimethyl-1-pyrroline-N-oxide(DMSO)を用いたESR計測では,フェントン反応からのHO.ラジカル生成に対するプロポフォールの効果について検討した.ESR装置JES-FR100,X-band(日本電子,東京)を用いた. その結果, (1)H_2O_2はα-受容体を介する血管平滑筋収縮機構を非特異的に抑制したが,FeSO_4による抑制効果は認められなかった. (2)H_2O_2はprostanoid非依存性の内皮細胞依存性弛緩反応を抑制したが,FeSO_4はこれを抑制しなかった. (3)propofol(10μM)は,H_2O_2による血管平滑筋反応の減弱を抑制した.以上の結果からpropofolはH_2O_2に対して高い消去活性を持つことが示唆された.
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