研究概要 |
癌組織のアポトーシスについては,癌細胞がTILや正常細胞のアポトーシスを引き起こし癌の進展や転移に関与しているとされる一方,放射線照射,抗癌剤投与などで癌細胞自身にもアポトーシスが生じることが知られている。今日の研究では,カルボプラチン(CBDCA)による舌癌細胞のアポトーシスが,Fasに依存していることを示すことができた。 Fasを活性化し,Fas依存性のアポトーシスを誘導するcytotoxic抗Fas抗体は,単独では高分化型ヒト舌扁平上皮癌細胞SCC-25のアポトーシスをほとんど誘導しなかったが,CBDCAに対する感受性を増加させた。逆に,Fas,Fas ligand(FasL)をブロックし,Fas依存性のアポトーシスを抑制するneutralizing抗Fas抗体,抗Fas L抗体は,CBDCAによるアポトーシスを抑制した。各種抗癌剤の添加24時間後のFas,Fas Lのタンパク量は基本的に変化しなかった。遺伝子の発現においても,Fasは変化せず,Fas LはCBDCA投与直後に減少し24時間で元のレベルに戻った。悪性細胞において,Fas依存性アポトーシスを抑制することが知られているFAP-1についてもその遺伝子発現に変化は認められなかった。また,SCC-25はFas感受性であるJurkat細胞のアポトーシスを誘導し,このアポトーシスはneutralizing抗Fas抗体,抗FasL抗体で抑制された。これらの結果より,舌癌細胞においてはFas,Fas Lともに発現しているがFasLは機能的であるのに対し,Fasは非機能的であり,Fasそのものを活性化してもアポトーシスが生じない状態にあり,CBDCAの存在によりFasが機能的なものに変わりFas依存性のアポトーシスが活性化されることが示している。
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