研究概要 |
低出力照射法は光重合型コンポジットレジンの重合収縮を緩和し、窩壁適合性の向上をはかるものである.しかし,照射光の強度は重合率とくに修復物底面の重合率に影響する.そこで,1,2,3mm厚のコンポジットレジン試料(3種の製品,4-6シェード)を透過した照射光の光強度を測定した.照射器の電球への出力は,7,8,9,10,11,12Vとした.その結果,いずれの出力においても製品およびシェードによって透過光強度に有意差が認められた.また,低出力照射を応用した"slow setting"法(250mW/cm^2×20s,10s休止,600mW/cm^2×20s)と通常出力照射法(700mW/cm^2×40s)の象牙質円柱窩洞における窩壁適合性を比較検討すると,使用した象牙質接着システムによる適合性の違いが認められ,隅角部と窩底部で"slow setting"法が良好な窩壁適合性を示す傾向が認められた.さらに,樹脂含侵層周囲の弾性を調べるため象牙質面,前処理象牙質面,ボンディングレジン面の弾性を押し込み試験で得られた押し込み深さから算出し,低出力照射(8V)と通常出力照射(11V)された2mm厚コンポジットレジン底面の弾性についても算出した.使用材料は,3種の象牙質接着システム(ワンステップ,シングルボンド,ライナーボンドIIΣ)および3種のコンポジットレジン(エリートフィル,Z100,AP-X)とした.その結果,ライナーボンドIIΣでは象牙質前処理面とボンディングレジン面間に差は認められなかったが,ワンステップ,シングルボンドでは前処理象牙質面とボンディングレジン面間に有意な差が認められた.8Vではシングルボンド/Z100を除いてボンディングレジン面とコンポジットレジン底面間に差が認められなかったが,11Vではすべてにおいて有意差が認められた.
|