研究概要 |
修復象牙質形成過程における象牙芽細胞の分化誘導のメカニズムを解明する目的で,歯の発生過程,う蝕,窩洞形成ならびに歯髄腔内硬組織形成過程における細胞分化の関連因子の局在について免疫組織化学的検索を行った.その結果, 1.歯の発生過程において,内エナメル上皮基底膜に沿ったラミニン-5とα6,β4インテグリンの特異的な発現が観察され,エナメル芽細胞の分化との関連性が示唆された.またこのような基底膜構成成分の変化は象牙芽細胞の分化の過程にも関連していると考えられる. 2.初期う蝕の段階から,MHC Class II抗原提示細胞(HLA-DR陽性細胞)とPGP9.5陽性神経線維はう蝕病巣下に集積し,進行したう蝕歯ではHLA-DR陽性反応は樹状細胞のみならず,髄鞘を有しないシュワン細胞においても認められた.また,PGP9.5陽性神経線維と象牙芽細胞ならびにHLA-DR陽性細胞との接合が高頻度に観察され,歯髄の炎症と修復過程における免疫系と神経系との協調作用が示唆された. 3.従来のバーとEr:YAGレーザーを用いた窩洞形成後,組織非特異的アルカリホスファターゼはレーザー群で窩洞形成直後から強く広範囲な反応が観察された.一方OX6陽性抗原提示細胞ならびにPGP9.5陽性神経線維は両群共に同様の局在性を示し,窩洞形成部位に一致した抗原提示細胞と数珠状を呈する神経線維の多数の集積が認められ,歯髄の修復過程,特に修復象牙質形成との関連性が示唆された. 4.ラット臼歯の皮下移植後の歯髄腔内硬組織形成過程における非コラーゲン性タンパク,オステオカルシン(OCN),オステオポンチン(OPN),骨シアロタンパク(BSP)ならびに象牙質シアロタンパク(DSP)の局在は歯冠部,歯根部および根尖部新生硬組織において異なる染色性を示し,それぞれ由来の異なる細胞により形成されることが示唆された.
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