研究概要 |
シラン処理層の耐水耐久性を向上させるために,3-MPSにポリフルオロアルキル基をもつ疎水性シラン(Poly(fluoro)alkyltrimethoxysilane)を混合し,これら混合シランで改質したガラス面に対するコンポジットレジンの接着強さから耐水耐久性を検討した. その結果,3-MPSに炭素数4〜6程度の鎖長の異なるポリフルオロアルキル基をもつ疎水性シラン(Poly(fluoro)alkyltrimethoxysilane)を混合した処理剤は,3-MPS単独処理に比べて,接着強さと耐水耐久性が有意に向上することを認めた.この耐水耐久性の向上はフルオロ基の撥水性の効果によると考える. 一方,高い接着強さが得られた原因については不明であった。この点を明確にするため,処理層の表面科学的性状や化学構造を解析した.すなわち,処理層の接触角やEPMA分析により解析した処理層の中のフッ素元素の分析,カップリング剤の分子構造の違いによる吸着状態の差,3-MPSに混合するシランの官能基(アルキル基)の鎖長の違いが処理効果におよぼす影響などを検討した. その結果,高い接着強さは,接着剤モノマーのぬれの向上と,処理層内でのシロキサンネットワークポリマーに接着剤モノマーである二官能性ジメタクリレートが浸入し重合したIPN(相互侵入網目構造)の形成によるものと考える.
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