研究概要 |
我々はLa以外のLanthanides(Ln)にう蝕予防効果を示唆する研究結果を得て、そのメカニズムを明らかにし、より効果的な臨床応用を目指した実験を続けている。今までにLnのglucosyltransferase活性阻害を介したう蝕細菌のガラス管壁への付着阻害を明らかにしてきた。その他のメカニズムとして、Lnには細菌凝集・沈殿を促進する作用のあることが示唆されたので、その至適条件等について検討した。ヒト口腔内よりう蝕細菌(S.sobrinus B13,S.mutans ingbritt)、歯周病原因菌(P.gingivalis),その他のplaque細菌(N.sicca,V.alcalescens,etc.)を分離培養し、これらに対するLu-acetate,La-acetateの凝集効果を調べた。その結果、これらLnの酢酸塩には0.1mM程度で吸光度(660nm)を半減させる凝集効果があり、そこに0.1mMのリン酸塩が共存すれば0.01mMのLu-acetateでも同じ効果を得ることが判明した(愛知学院大学教養部紀要,47(4),2000)。さらに、Ln処理したhydroxyapatite(HA)は耐酸性が高まり酸脱灰が低下していることを発見したので、その至適条件等を明確にした。その結果は現在論文投稿中であるが、(1)Ln塩の種類により脱灰阻止効果が異なった-塩化物ではLa,Ho,Ybが、硝酸塩ではPr,Smが、そして酢酸塩ではいずれも良い効果を得たがCe,Pr,Ho,Ybなどで特に脱灰阻害効果が上昇した。(2)効果の高かったCe,Ho,Ybの酢酸塩溶液のpHの影響を調べると、pH5.5が至適pHであった。(3)Ln溶液の濃度は高い程効果は高いが、臨床応用されている2%NaFと比べて、同濃度ではLn溶液の方が脱灰阻止能が高かった。(4)処理時間2分で効果はほぼプラトーに達した。(5)Ln溶液の保存液の安定性を1,2,3,4週、及び6ヶ月間、各月に調べたが、効果の低下は認められなかった。(6)HAの純度が効果に影響していた。これはNaFでも同じ傾向であった。HAの化学分析値やX線回折による純度判定で純度の低いものほど効果が低下していた。以上の結果を得ている。
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