研究概要 |
[目的]疲労強さが熱処理で変化を示さなかった原因を明らかにするため,疲労亀裂進展速度と応力拡大係数および有効応力拡大係数範囲との関係を各熱処理で検討した. [材料および方法]1.アクリル板より鋳造用パターンを作製し,鋳造リング中央に1本植立し,石膏系埋没材で通法に従って埋没した.埋没材の硬化後,100℃で30分,300℃で1時間,700℃で30分係留の後,鋳造を行い,室温まで自然放冷後,鋳型より取り出した.鋳造体は表面清浄剤を用い超音波洗浄を行い酸化被膜を取り除いた後,ワイヤー放電加工機を用いて,ASTM-E647に準じたコンパクト試験片を作製した.試験片はメーカー指示の熱処理を行った. 2.裂進展長さは切欠き部に生じた亀裂をCCDカメラ(VS-60,三菱化学)を用い倍率100倍で計測した. 3.応力拡大係数はASTM-E647にて求めた.また有効応力拡大形数範囲は試験片背面に付与した箔ひずみゲージ(FLK-2-17-1L,東京測器研究所)の歪み信号と負荷荷重信号を引き算回路を使用して亀裂の開口荷重を確認する除荷弾性コンプライアンス法にて求めた. 4.疲労試験にはインスロン社製油圧サーボ式動的試験機(8501,Instron)を用い常温大気中で負荷波形として片振りサイン波,周波数5Hz,最大荷重50〜77.4kgf,応力比0.1にて繰返し応力を負荷した. [結果および考察]亀裂は微小な凹凸を生じながらも試片中央を進展した.切欠き近傍での有効応力拡大係数範囲が15MPam^<1/2>では亀裂進展速度は約3×10^<-7>m/cycleであり,熱処理による明確な違いは観察されなかった.その理由として以下のことが考えられる. 1.鋳造試片を用いたためばらつきが大きくなった. 2.負荷応力が大きかったため亀裂進展の初期が捕らえられなかった. 今後さらに試片の数を増やし測定する予定である. <本研究は第34回日本歯科理工学会学術講演会にて発表した.>
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