研究概要 |
舌癌の放射線治療時に発生する骨壊死や粘膜潰瘍などの放射線後障害を予防する目的でスペーサーが使用されている。このようなスペーサーの製作法を確立する目的で,放射線治療(組織内照射)を行っている医療機関を対象にして,スペーサーについての実態調査を行った。次いでより簡便なスペーサー製作法の確立と臨床応用を図り,本スペーサーの臨床評価を行い,以下の結果を得た。 1.放射線治療(組織内照射)を実施している35施設において,32施設(91.4%)でスペーサーが使用されていた。 2.スペーサーの材質は,ガーゼが最も多く,次いでアクリリックレジン,シリコーン印象材(パテタイプ),エルゴデュール+即時重合レジン,義歯等が使用されていた。 3.ガーゼの縫合固定と直接法によるシリコーン印象材製スペーサーの製作は,医師が行っていた。それ以外のスペーサーの製作は,補綴的手法を用いて歯科医が行っていた。すなわち,アクリリックレジン製スペーサーは,義歯製作に準じて製作されていた。エルゴデュール製スペーサーは,エルゴプレスを使用して製作されていた。義歯は,即時重合レジンで形態修正して使用されていた。スペーサー製作法として規格統一された方法はなかった。 4.スペーサーの形態に修正した咬合床を複製印象してスペーサーを製作する簡便法を開発した。本スペーサーは,セット時の調整にやや時間を要するものの,製作がきわめて簡単であった。さらに製作日数が3日(実日数2日)で,大幅に製作日数を短縮することができた。 5.本スペーサーを製作した患者全員が,治療期間中24時間,本スペーサーを装着していた。 6.今後長期間の経過観察が必要であるが,現在のところ本スペーサーを製作した患者に放射線後障害の発生は1例もない。 7.以上の結果から,本スペーサーは,製作が簡便で臨床的にも有効であることが示唆された。 本研究結果の一部は,第24回日本補綴歯科学会中国四国支部総会で発表した。
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