研究概要 |
本研究では貴金属合金,プライマー,接着剤,前装材料を使用して,以下の各項目について実験を行った. プライマー組成の検討においては,貴金属接着に際しチオン系モノマーとリン酸エステル系モノマーを併用した2液型プライマーが,他の1液型プライマーよりも処理効果が優れることを示した.金属表面処理法の検討では,サンドブラストの空気圧がを0.3MPa以上必要で,基本的にプライマーの併用が必須であることを明らかにした.次に金属の種類が接着耐久性におよぼす影響を検討した.その結果,現在わが国で市販されている貴金属合金の中では金銀パラジウム合金が接着耐久性に優れ,次いでType IV金合金であることが明らかになった. 一方,接着剤の組成が異なる試料を作製し,接着剤の種類が耐久性におよぼす影響を検討した.その結果,装着材料においては,アクリル系材料において試料間のばらつきが少ない反面,コンポジット系では逆の傾向を示した.前装用レジンの接着では,プライマーの種類とオペークレジンの重合方法が接着強さに影響した.良好な成績を示した試料についてエックス線光電子分光分析装置を用いて接着界面を分析した.その結果,含硫黄モノマーのチオキソ基に由来する硫黄が貴金属元素パラジウムと結合していることを明らかにした. 以上のことより,貴金属合金に対して良好な接着耐久性を得るには,1)金属は金銀パラジウム合金かType IV金合金,2)金属前処理としてサンドブラスト,3)接着剤はトリブチルホウ素開始型常温重合レジン,4)プライマーはチオン系モノマーとリン酸エステルモノマーを含むプライマー,などを併用する必要があることを明らかにした.
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