研究概要 |
表面性状の骨組織に対する影響をin vitroでの牛骨片ならびに生体材料上で分離破骨細胞を培養することで評価を行った.新生児ラットから分離した破骨細胞を耐水研磨紙で加工した牛骨片上で培養し,表面性状が破骨細胞の骨吸収能に及ぼす影響について検討した結果では,表面性状が粗であれば破骨細胞の骨吸収能を増大させることが示され,骨芽細胞が骨吸収能の増大に関与していることが示された.次いで,異なる生体材料の表面粗さが破骨細胞の挙動にどのように影響を及ぼすか検討した.試料には牛骨片を対象とし,生体材料(高純度純チタン,ハイドロキシアパタイト)を薄切したものを用いた.表面処理は薄切した面を滑面とした.粗さの付与は400番の耐水研磨紙を用いて凹凸を付与し,粗面とした.各試料に新生児ラットより得た破骨細胞をのせ,3日間培養した.培養終了後,酒石酸耐性酸フォスファターゼ染色(TRAP染色)とアルカリフォスファターゼ染色(ALP染色)を施し,破骨細胞と骨芽細胞数を計測した.牛骨片とハイドロキシアパタイト上の細胞を除去した後,走査電顕により生じた吸収窩の個数と面積を測定した.その結果,各試料の破骨細胞数は粗さの有無に関係なく経日的に減少した.しかし,骨芽細胞では粗さにより細胞数の増加がみられた.さらに,牛骨片とハイドロキシアパタイトの吸収窩の測定で粗さによって骨吸収の増加がみられた.以上の結果より,各生体材料の表面性状の違いによって破骨細胞の発育や活性化に影響を及ぼすことが示された.吸収性の試料に比べ金属試料である純チタンは破骨細胞の発育が低く,これは基質の物理的または化学的要因によるものと考えられた.吸収窩の計測で,牛骨片とハイドロキシアパタイトの粗さによって骨吸収の増加が見られ,骨芽細胞との細胞連鎖機構(カップリング)現象による可能性が推測された.
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