研究概要 |
微小電気刺激のよる骨再生誘導法の実用化を目的として,生体吸収性で圧電性を有するポリL-乳酸フィルム(PLLAフィルム)を用い,微小電気刺激が骨欠損周囲の骨再生に及ぼす影響を病理組織学的に観察した.ラットを用いた実験では,大腿骨皮質骨に直径2mmの骨窩洞を作成してPLLAフィルムで被覆し,術後2週例,4週例のみ脱灰研磨標本を作成し,PLLAフィルムによる微小電気刺激が骨再生に及ぼす影響とその範囲を検索した.その結果,対照群に比較して,PLLA群では骨形成は早期より骨窩洞内に広範囲に認められ,量的に,質的に促進されていた.さらに大腿骨の皮質骨周囲にも全体的に骨添加を認め,皮質骨の幅が術前の約2倍になった.また,ビーグル犬を用いた実験では,下顎骨抜歯窩に対して非吸収性圧電膜を応用し微小電気刺激を作用させた結果,新生骨は抜歯窩内の広範囲に早期より形成され,さらに皮質骨周囲にも広範囲に骨添加が認められた.術後6週例において新生骨は既存骨と同程度に成熟度を増していた. したがって圧電フィルムによる微小電気刺激は,骨欠損部治癒家庭において骨再生を促進するのみならず,フィルムの周囲に広範囲に影響を与え,皮質骨にも骨添加を促進することが明らかになった.このことから,微小電気刺激はメカニカルストレスとして骨形成の重要な因子となり,骨損傷部および既存骨に広範囲に存在するメカノレセプターに影響を及ぼし,骨形成を促進することが推測された.今後,新生骨の性状について免疫学的観察を行うとともに細胞レベルで微小電気刺激の影響を検索し,微小電気刺激に対するメカノレセプターの作用を生化学的に検討する予定である.
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