研究概要 |
1.インプラント支持上部構造の良好な適合を得ることを目的として,下顎片側第二小臼歯,第一第二大臼歯欠損を想定し,同部に2本のIAT FIT IIインプラントを植立した金属歯列原型を用いて,原型上の標点と作業模型上の標点を三次元計測することにより,作業模型の寸法精度を検討した.インプラントの平行植立(平行型)および支台インプラント間に傾斜がある場合(傾斜型)について印象材の違いによる比較検討を行った.その結果,付加型シリコーンラバー印象材の違いによる作業模型の寸法精度への影響は小さいと考えられる一方,傾斜型においては多くの標点が下方への変位を認め,特にインプラント部において顕著であった.また,インプラント部の標点は時計回りの回転を示し,支台歯間の傾斜は作業模型の寸法精度に影響を及ぼすとの結果を得た. 2.臨床上見られるインプラントの咬合平面に対する傾斜に注目し,特にインプラントの近心傾斜がインプラント,上部構造体,顎骨の応力分布に及ぼす影響について有限要素法による検討を行った.その結果顎骨においてはインプラントの傾斜に伴い咬合平面に垂直に植立されているインプラントでは変化が少ないのに対し,傾斜させたインプラントでは傾斜側顎骨に応力が集中した. 3.さらに顎骨において骨吸収を起こす可能性があると言われる応力値(10Mpa)を基準として採用し,この応力を顎骨に発生させる最小限の荷重量(以下限界荷重量と呼ぶ)を求めた.その結果咬合面に垂直に植立されているインプランドでは限界荷重量の変化が少ないのに対し,傾斜させたインプラントでは傾斜側で限界荷重量の減少が著明となった.また食事中に発生する咬合力,すなわち有限要素法における荷重量を20Kgfと想定し検討した結果,インプラントの良好な予後を得るためにはインプラントの傾斜は15°未満が望ましいと考えられた.
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