研究概要 |
日本口腔インプラント学会員600名を調査対象とし,インプラントの臨床応用の実態を調査する目的で,一連のインプラント臨床応用に関してアンケート調査を実施した。その結果,合計307通の回答があり,インプラントの臨床応用の傾向を知るうえでは,十分意味のあるものであった。 本調査結果より,インプラントの臨床応用症例が最も多い欠損形態である下顎遊離端欠損のシミュレーションモデルを考案し,インプラント植立を行いその植立方向の計測方法および評価法について検討した。さらに,サージカルステント(以下,ステント)の精確性,重要性を解明するため,ステントを使用した植立シミュレーションを行った。その結果,ステントを使用すると植立経験の有無,植立位置に関わらず,一定方向に精確なインプラントの植立が可能であったが,ステント未使用時は一定の方向に精確な植立が困難であった。 CTスキャンによって得られた情報を,光硬化型樹脂により模型として再現する三次元実体光造形モデル(以下,SLM)は,医・歯学領域において広く使用され始めているが,寸法精度等に関する研究はほとんど見られない。そこで,下顎無歯顎を想定したマスターモデルからSLMを造形し,その寸法精度について検討を加えた。水平面において舌側のアーチが小さくなり,矢状面において高さが減じる傾向を示したが,唇側面では変位がほとんどなく水平的外周形状は変化が比較的少ないと思われた。 さらに,実際に患者を選定しCT撮影後にSLMを造形し,骨膜剥離強度を再現した疑似軟組織を付与したシミュレーションモデルを考案し,術前シミュレーションを行った。切開線の設定部位や骨膜剥離時の感覚および削除量・埋入間隔など,硬組織のみならず軟組織の取り扱いに至るまで,十分かつ実践的なシミュレーションを行うことが可能であり,システムの有用性が明らかになった。
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