研究概要 |
歯原性角化嚢胞の病態を一層明らかにし、その再発性について解明するために、本嚢胞13例を対象に臨床的、病理組織学的、免疫組織息化学的に研究を行った。 臨床事項の分析として、性別では男性8例、女性5例であった。年齢は17-76歳、平均49.4歳であった。部位は全て下顎であった。下顎角部は4例と多かった。嚢胞内容物はオカラ状が9例と多くみられた。X線像では多房性7例、単房性6例であった。全例、摘出術を行ったが、摘出後、骨面を一層削除した。再発は1例のみに認められた。 ヘマトキシリン・エオジン染色標本所見では嚢胞壁には全例、角化がみられ、うすく、一様で、上皮脚はない症例が7例と多くみられた。娘嚢胞は全例に認められなかった。 免疫組織化学的に各種サイトケラチン(10/13,8,10,18,19,20)の存在を6例について検討した。 10/13陽性症例は6例中2例、8は6例中3例、10は5例中2例、18は6例中4例、19は6例中2例であった。20は5例全て陰性であった。 増殖能の検討にKi-67、EGF、bcl-2、およびc-mycの発現を検討した。c-mycは1例に陽性であっただけで、他は全て陰性であった。 以上から、下顎に発生した多房性の嚢胞で、オカラ状内容物を有する症例は本嚢胞が疑えると思われた。免疫組織化学的に若い年齢層にはサイトケラチン18が、年齢の高い症例には10がみられる傾向であった。本嚢胞の増殖能は高いとは考えられない結果であった。
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