研究概要 |
本研究においてはモルヒネ耐性形成時における大脳皮質神経細胞N型カルシウムチャネルの量的増加(平成5年度当該研究にて報告済み)に伴うカルシウムチャネルの機能的変化を実験的に証明した。 主要な成果として1,マウス大脳皮質シナプス分画において脱分極刺激による45Caの流入量がモルヒネ耐性形成時に29%,クロニジン耐性時に27%増加することを示した。2,45Caの流入はN型チャネルの選択的ブロッカーω-conotoxin GVIA 10mMにより対照群で32.%抑制されるのに対してモルヒネ耐性時に5%,クロニジン耐性時に10%しか抑制されず,またP/Q型チャネルプロッカーによっても同様の傾向を示すことを示した。3,ω-conotoxin GVIAのマウス脳室内投与により中枢性鎮痛作用が生じ,この作用はモルヒネ耐性,クロニジン耐性時に有意に減弱することを示した。すなわちモルヒネ耐性時にN型カルシウムチャネル量が増加している現象が機能的,生体的な面から裏付けられ,クロニジンとの比較からオピオイド受容体レベルの変化とは別に,モルヒネ耐性はカルシウムチャネルの変化として説明できることが証明された。またN型チャネルは特に重要であるがP/Q型チャネルも関与している可能性があることが示唆された。 さらに新展開として一酸化窒素(NO)がモルヒネ耐性に及ぼす影響を調べるためにまずモルヒネとNOの相互作用について実験を行った。成果として外因性活性酸素発生剤,中でもONOO-により誘導されるヒト神経芽細胞腫細胞SH-SY5Y系のアポトーシスがモルヒネにより抑制されることを示した。他のオピオイド受容体選択的作動薬はモルヒネのような作用は示さず,ナロキソンが拮抗しないためモルヒネとONOO-の相互作用はオピオイド受容体を介さないスカベンジ作用である可能性を示した。
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