研究概要 |
1.転写因子NF-_kBの抑制因子の一つであるI_kB-αのうち、外界からの刺激によっても分解を受けない変異型I_kB-αcDNAを導入した不死化ヒト唾液腺細胞クローン(ACMT-6とACMT-7)とempty vectorのみを導入した細胞クローン(ACpRc-1)を樹立した。これら細胞クローンの増殖能を検索したところ、ACMT-6とACMT-7においてはACpRc-1に比較して60-75%の増殖能を示すことが明らかとなり、NF-_kB活性の抑制が細胞増殖抑制につながることが示唆された(Azuma,M.Exp.Cell Res.,250:213-222,1999)。 2.抗癌剤である5-Fluorouracil(5-FU)はACpRc-1,ACMT-6及びACMT-7の細胞増殖抑制においてほぼ同程度の抑制率を示すことが明らかとなった。この原因を5-FUのNF-_kB活性に及ぼす影響の点から解析した結果、5-FUはこれら細胞クローンのNF-_kB活性にほとんど影響を及ぼさないことが判明した。したがって、5-FUがこれら細胞クローンの増殖抑制に対して相乗的効果を発揮するためには、5-FUがNF-_kB活性を抑制する必要がある可能性が示唆された(投稿中)。 3.唾液腺癌細胞株であるcl-1細胞を5-FUにて処理した場合、NF-_kB活性の低下を誘導することが明らかとなった。このメカニズムを解析するため5-FUがI_kB-αの発現に及ぼす影響を検索したところ、I_kB-α蛋白の発現増強がみられたがmRNA発現には変化がみられなかった。よってI_kB-α蛋白の発現増強は他のメカニズムによる可能性が示唆された。
|