研究概要 |
我々は口腔扁平上皮および口腔扁平上皮癌細胞におけるFas/Fasリガンドシステムおよび蛋白質のリン酸化と脱リン酸化におけるアポトーシスとの関係について研究を進めてきた。これまでに、特異的な抗Fas抗体を作成し、口腔粘膜上皮にFas抗原が存在し、その分子量が35kDaであることを証明した(Yoshioka et. al., 1996)。また、Fas抗原が口腔関連各種疾患において特異的に発現する事(Muraki et al, 1997)、口腔扁平上皮癌の分化度とFas抗原発現の局在性に相関性が認められる事についても報告した(Muraki et al, 1999)。我々はさらに培養扁平上皮癌細胞(SCC-25細胞)にFas抗原およびFasリガンドのmRNAが発現することをRT-PCR法を用いて証明した。さらに、無血清条件下で培養扁平上皮癌細胞を抗Fasモノクロナール抗体で刺激することにより、Fas抗原蛋白の発現が促進され、その結果細胞にアポトーシスが誘導されることを見いだした(Seta et al, in press)。以上の結果は国際顎顔面外科学会(Washington D. C., April, 1999)で評価され、学会賞が与えられた(Muraki et al, 1999)。我々は蛋白質脱リン酸化酵素阻害剤(オカダ酸とカリクリンA)が培養扁平上皮癌細胞に濃度依存的に細胞障害を引き起こしこの障害がアポトーシスによるものであることを証明し報告した(Fujita et al, 1999)。これらの結果とともにFasおよびFasリガンドの発現と血清刺激との関係や蛋白質脱リン酸化酵素阻害剤が誘導するアポトーシスの機序解明など新たな知見をもとに、in vitroの系を用い現在研究を進めている。本研究を進めることは正常組織からの癌発生の予測、残存癌細胞や転移細胞の検出、疾患の予後予想を行う上で臨床上特に重要となりうるものと考える。
|