研究概要 |
1 LIM細胞(低転移株)からHIM細胞(高転移株)への誘導,および腫瘍細胞継代に関連する転移巣の形成 放射線医学研究所から恵与された直後のNR-S1を初代株すなわちLIM細胞としてin vivo継代を行ったが,移植されたLIM細胞が腋窩リンパ節に転移巣を形成するまでに平均75日間を要し,転移巣の大きさは平均7x8mmであった.また,初代の転移形成率は5匹中2匹(40%)であり,腫瘍死に至るまでの期間は転移形成個体において114日であった.12継代目からは初代に比しリンパ節転移巣形成に要する期間が有意に短縮し(平均40日),12継代目ではその大きさは8x10mmであり,転移巣形成率は100%であった(n-5).13継代目での腫瘍死に至る期間は初代に比し有意に短縮し,64日であった. 転移巣は腫瘍細胞を移植した部位とは明らかに分離されており,連続性は認められなかった.転移は腋窩あるいは鼡径リンパ節に認められ,肺あるいは肝臓には少なくとも肉眼的に転移を認めなかった. 2 LIMとHIM細胞膜上の細胞接着分子について 1)CD44の発現;LIM細胞における発現は平均蛍光強度47.3,15代目のHIM細胞では132.1であった.20代目のHIM細胞では84.7であった. 2)LFA-1の発現;LIM細胞における発現は平均蛍光強度24.2,15代目のHIM細胞では73.4であった.20代目のHIM細胞では73.3であった. 3)ICAM-1の発現;LIM細胞における発現は平均蛍光強度35.3,15代目のHIM細胞では54.1であった.20代目のHIM細胞も同様であった. 4)VCAM-1の発現;LIM細胞における発現は平均蛍光強度26.7,15代目のHIM細胞では32.3であった.20代目のHIM細胞もほとんど変化が無かった. 3 LIM細胞とHIM細胞の活性型MMP-2とMMP-9について 1)LIM細胞 (1)MMP-2;ほとんど活性型は認められなかった, (2)MMP-9;4.94ng/mlであった. 2)HIM細胞 (1)MMP-2;3.47ng/mlであった. (2)MMP-9;11.50ng/mlであった. 4 ゼラチンザイモグラフィーによるgelatinase活性の確認 LIM細胞,HIM細胞は活性型gelatinaseの存在を示した.LIM細胞ではMMP-2をほとんど認めないがMMP-9の活性は認められた.HIM細胞では強いMMP9活性を示し,MMP2活性も認められた. 5 LIM細胞とHIM細胞のテロメア長について LIM細胞,HIM細胞ともに20Kbp以上を示したが,HIM細胞のテロメア長のsouthern blottingのバンドは広く,短いテロメア長をもつ細胞の混在が見られた 6 LIM細胞とHIM細胞のテロメラーゼ活性について 双方の細胞にテロメラーゼ活性が認められたが,TRAP法では定量的差は認められなかった.
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