研究概要 |
私たちは,1997年,性能の向上した細経ファイバースコープに手術用チャンネルを組み込みかつ,従来より使用されているレンズ型関節鏡の外套管と互換性を有する新しい顎関節鏡を剪刀,鉗子およびプローブなどの手術器具と共に開発し,報告した.しかし,本手術用チャンネル付細経顎関節鏡(直径2.4mm)を用いた手術術式とその適応については確立されてはいない.そこで,ヒト顎関節と類似のヒツジ顎関節を用いて,開発した手術用チャンネル付細経顎関節鏡下で開発した手術器具,電気メスによる切開操作などの顎関節鏡視下手術を施行し,術中鏡視所見と術後2,4,8,12週の剖検所見,レントゲン所見および組織学的的所見の対比を行い,最小の顎関節への侵襲による有視下で精密な手術術式の臨床応用を目的に本研究を計画した.メリノ種のヒツジ(雄,体重60Kg)13頭を実験材料とした.GOF全身麻酔下で,手術用チャンネル付細経顎関節鏡を顎関節上関節腔内に刺入し,電気メス(米国Vally lab社製モデルSSE2L-8)を用いて,後者では,関節結節軟骨には175w,関節円板後部結合組織には125wの出力で切開創を作成した.術後2,4,8,12週目に細径顎関節鏡(直径1,1mm)で同関節腔内を観察後,安楽死させ,顎関節を摘出した.術後2週目の組織学的所見では,円板後部結合織は裂創が残存していた.また,関節結節部の軟骨下骨が露出していた.術後4週間目では後部結合織に穿孔が認められ,術後12週目では円板の前方転位と下顎頭の変形が認められ,骨関節症の所見を呈していた.シャム手術を施行した群では組織学所見において正常群と変わらなかった.以上の結果から,鏡視下手術において電気メスを円板後部結合織に用いると変形性関節症を惹起する可能性があることが示唆された.
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