研究概要 |
平成11年度における科学研究費補助金による研究の実績は以下のとうりである. 1.in vivo歯肉肥大誘発実験:生後15日齢のFischerラットにシクロスポリン(CsAと略:50-300μg/g),ニフェジピン(200-800μg/g)あるいはジルチアゼム(600-6000μg/g)含有粉末飼料(CE-2)を与え40日間飼育した.また,薬物複合投与の影響をみるため,CsAと二種類のCa拮抗薬を複合投与して,歯肉肥大の程度と血圧の変動,血中薬物濃度との関係を調べた. その結果,CsAが最も顕著な歯肉肥大を誘発し,次いでニフェジピン,ジルチアゼムの順であった.CsAとCa拮抗薬との併用投与においては,いずれも歯肉肥大の程度は重症化していた.これらはどの組み合わせてみても,単独投与群の肥大を加算した(相加的)効果と考えられた. 2.臨床的観察:最も新しいCa拮抗薬のアムロジピン服用者について,経時的な歯周組織の変化を臨床的に検索した.その結果,アムロジピンの服用によって薬物誘発性の歯肉肥大が生じること,それが服用中止により軽減し,再開によって再発することがわかった.しかし再発性の歯肉肥大は,プラークコントロールを中心とした歯周疾患の初期治療によって症状を軽くできることがわかった. 3.in vitro実験:ヒト歯肉線維芽細胞を分離,増殖し,5-8代継代の細胞を使用した. 歯肉線維芽細胞の増殖とアポトーシスは,培養液にニフェジピン(500ng/g:1.5μM)を添加することによって抑制された.アポトーシスのほうが,薬物による影響を強く受けており,歯肉組織リモデリングの変調が歯肉肥大発生の一因であることが明らかになった.さらに,Ca拮抗薬はマクロファージ様細胞RAW364のLPS刺激による誘導型一酸化窒素合成酵素(iNOS)の誘導を阻害することによって,細胞死を抑制することが,炎症時における組織傷害に対して,防御的に作用することが示された.
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