研究概要 |
平成10,11年度では,6自由度磁気センサの精度検定と有鉤測定範囲の決定を行い,頭部動揺を補正するアルゴリズムを決定した.平成12年度では,被験者の頭部および顔面部を測定フレーム内に位置づけ,下顎前歯部,頭部,左右肩部に磁気センサを装着し,バイモルフ圧電フィルムを5個直列に配列したセンサを舌表面に接着して無意識下での嚥下時の発生電圧を得た.これにより3次元空間での頭部,下顎部,上肢の位置情報および舌の形状情報を得ることが可能となった. 1)トランスミッタからレシーバまでの距離が400mm以内では,X,Y,Zの1S.D.は±0.02mm以下,azimuth,elevation,rollの1S.D.は±0.005°以下であり,下顎運動の3次元計測に有効な精度を有していた. 2)600mm以上の位置では変動が大きいために,下顎運動計測に必要な精度が得られなかった. 3)被験者の下顎運動を3次元コンピュータグラフィックスを用いてリアルタイムに観察可能であった. 4)安静時における姿勢変化では,開咬症例では正常咬合者に対して頭部が上方に傾斜する傾向が認められた.自発嚥下においては,正常咬合者では下顎の動きに同期した頭部の姿勢変動が認められた.開咬症例においては,下顎と頭部・上肢の姿勢変動の同期性は明確に認められなかった. 5)正常咬合者では舌背部でのセンサの曲率が大きく,舌背部の挙上が認められたが,開咬症例では舌背部でのセンサの曲率が小さく,舌背部が平坦な状態で嚥下を行っていた.正常咬合者では舌尖が最上方位に到達する前に舌背の低下が発生し,舌尖が最上方に位置した後に舌背は最下方に位置していた.開咬症例では,舌背低下の開始時期は正常咬合者と類似していたが,舌尖の上方移動量は小さく舌背の最低下が正常咬合者よりも早期に出現し,舌尖が最上方に位置する以前に舌背は最下方に位置していた.
|