研究概要 |
【目的】 本研究は,幼時期から成人期までのヒトを対象に,顎運動と咀嚼筋活動および歯列弓形態における年齢群間の違いを調べ,さらに両者の相互関連を明らかにすることを目的とした. 【対象と方法】 対象は,Skeletal I級の正常咬合者で明らかな顎機能異常のない幼稚園児(K群),小学5年生(E群),中学2年生(J群),高校2年生(H群),大学生(U群),各8名である.ガムを咀嚼時の,下顎切歯路の外形,移動距離,開口相,閉口相および咬合相の長さ,咬筋,側頭筋,顎二腹筋の活動量,および顎運動と顎筋活動の同期性を解析した.また,咬合模型の三次元計測装置を用い,歯列弓の形状を解析した. 【結果】 1.下顎切歯路の外形は,K群では垂直的な直線形で,形や大きさが不規則であったが,他の4群では開口位が咀嚼側に偏位した水滴形で,規則的であった. 2.咬合相における咬筋と側頭筋の活動量は,K群で有意に大きかった.閉口相と開口相では差がなかった. 3.K群では閉口開始前に咬筋と側頭筋の活動が開始した.他の4群では閉口開始後に活動を開始し,その時間差はU群で有意に長かった.全群で開口開始前に顎二腹筋の活動が開始し,その時間差はKとE群で有意に長かった. 4.歯列弓の長径は,K群で有意に短く,口蓋の深さはK群からU群まで増齢に伴って深くなった.口蓋傾斜角は,KとE群で有意に大きかった.歯槽骨幅はK群で有意に小さかった. 5.片側咀嚼者では,両側咀嚼より,上下顎歯列弓のずれの面積が大きかった. 【考察】 K群は,他の4群より顎運動も筋活動も未発達と考えられた.E群では,顎運動はほぼJ,H,U群と同様に発達しているが,顎運動と筋活動の同期性が発達途中にあると考えられた.片側咀嚼群では,上下顎歯列弓のずれが大きく,顎運動と歯列弓形態の関連が示された.
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