研究概要 |
歯科用デジタルX線画像診断システムの法医実務への応用には,デスクトップ型機器の携帯化を図るとともに携帯用X線照射器の回路を画像入力時のスイッチの回路に合わせる必要がある。そこで,まず既存のノート型PCにデジタルX線画像用ソフトを移管した結果,同ソフトは支障なく作動することが確認された。また,スイッチの回路はX線照射器の電源供給装置への信号検出器の取り付けにより閾値を間接的に合わせることが可能となり,本システムの携帯化が実現された。次に,画像の転送システムについて検討した。本装置による1口腔単位としての歯のデジタルX線画像は,ソフト自体がWeb対応していないため,市販のEditorで一度読み込みJPEG形式で圧縮しメールソフトに添付して送信する手順を踏まざるを得ない。しかし実験の結果,受信画像は解像度が低く,歯髄腔や骨梁パターンを的確に把握できなかったことから,現段階では230KBの歯の画像を1枚ずつ保存し,これを数枚ずつまとめて送信するしか方法はないことが判明した。 さらに本システムの特性を活かし,デジタルX線画像解析による根部歯髄腔の狭窄程度を指標とした年齢推定のための重回帰式の算出を試みた。下顎小臼歯を資料とし,根部歯髄腔の頬舌・近遠心方向の画像上で歯根幅に対する根管幅の割合を計測し,その計測値を要因とした年齢推定のための重回帰式の算出を試みた結果,実年齢と推定年齢との重相関係数は第一小臼歯では0.89,第二小臼歯では0.82であった。同様に,上下顎犬歯の歯根部歯髄腔の頬舌・45度・近遠心,計3方向の画像を用いて重回帰式を算出した結果,重相関係数は上顎犬歯で0.84,下顎犬歯で0.72,上下顎犬歯で0.78であり,さらに下顎犬歯に小臼歯を加えて下顎側方歯群の頬舌方向のみの画像を用いた場合,重相関係数は0.71であった。
|