研究概要 |
歯槽骨の再生過程においてCbfa1を含む骨再生関連候補遺伝子について発現様態を調べ,そして外来遺伝子導入の基礎実験を行い以下の成果を得た。 骨再生過程の組織は,ラットの臼歯部歯槽骨に骨欠損を人工的に作成し,治癒過程にあるに肉芽とその周囲の骨組織とした。この組織は摘出し,組織標本を作成した。歯槽骨に欠損を形成した後の1週目では,欠損内は幼若な肉芽組織で占められていた。2週目には,肉芽組織内に血管の増生を確認した。4週目では,歯槽骨の欠損面に染色性が異なるとともにその表層に骨芽細胞様細胞が配列する骨梁を確認した。歯槽骨の再生過程において骨再生関連候補遺伝子の発現をリバースノーザンハイブリダイゼーションで調べた。この組織においては,Cbfa1のみならずBGPおよびTGF-βとその受容体の遺伝子のmRNAを検出できた。そして,mRNA量が骨の再生過程において経時的に変化する遺伝子は,TGF-βとその受容体であるTGFβR-IIIであった。 Cbfa1遺伝子産物を骨再生に応用するためには,先ず外来遺伝子を細胞に発現させ,その遺伝子産物が活性を発揮させる系を確立することが必須条件である。そこで,ヒトIL-1βcDNA全長を発現ベクターに挿入し,これを培養COS-1に遺伝子導入することによって発現細胞株を得た。そして,この細胞株とヒト歯肉線維芽細胞を共培養した。In situハイブリダイゼーションでIL-8遺伝子発現細胞を調べたところ,COS-1に近接するヒト歯肉線維芽細胞にIL-8 mRNAを検出した。この結果は,外来性遺伝子を発現させた細胞を生体に移植すると,その周囲の細胞が新たなる遺伝子発現を発揚される可能性を示すものであった。
|