研究概要 |
アミンN-オキシドは高い求核性と低い塩基性を特徴とする興味深い官能基である。N-オキシド化合物の変換反応に関しては膨大な研究例が知られているが、これを触媒または.触媒の構成配位子とする有機合成反応の開発は殆ど試みられていない。いままで顧みられなかった配位子としてのN-オキシド化合物に注目し、その特性を活用した新規合成反応の開発を目的として検討を行った結果、以下の知見を得た。 (1)メチルトリオキソレニウムを触媒とする過酸化水素によるオレフィンのエポキシ化反応において、ビピリジンN,N'-ジオキシドの添加が副生するジオールの生成を抑制することを見いだした。 (2)ピリジンN-オキシド誘導体が、アリルトリクロロシランによるアルデヒドのアリル化反応を触媒するととを見いだした。さらに、本反応をキラルな爪オキシド誘導体を触媒とした不斉反応へと展開し、(S)-3,3'-ジメチル-2,2'-ビキノリンN,N'-オキシドを不斉触媒として用いることにより、最高不斉収率92%で対応するホモアリルアルコールを得ることに成功した。また,本反応を応用して,塩化アリル誘導体からワンポットで光学活性ホモアリルアルコールを合成する簡便法の開発に成功した。これはキラルN-オキシドを触媒とする初めての不斉合成の成功例であり、N-オキシド化合物の触媒としての新しい可能性を拓くものである。(3)(S)-3,3'-ジメチル-2,2'-ビキノリンN,N'-オキシド・ヨウ化カドミウム錯体がエノンに対するチオフェノールの不斉共役付加反応の触媒として有用であることを見出し,最高不斉収率79%eeで対応するスルフィドを得ることができた。これはカドミウム化合物を不斉触媒とする初めての有機合成反応であり,N-オキシドがカドミウムの特異な反応性を引き出した結果である。
|