研究概要 |
ケトジシクロペンタジエンは,シクロペンタジエノン等価キラル合成素子として多様の用途を持つ事がすでに示されている.従来,酵素を用いる手法によってキラリティーの導入がなされていたが,これをルテニウムーキラルジアミン錯体{Ru^<II>-(S,S)or(R,R)-mono-N-tosyl-1,2-diphenylethylenediamine}[Ru^<II>-(S,S)or(R,R)-TsDPEN]触媒存在下アセトン中不斉水素転移反応を適用することによって合成することを検討した. ケトジシクロペンタジエンの前駆体となるラセミ体エンドアリルアルコールについて,まず不斉水素転移反応を検討した.通常,不斉水素転移反応条件下にはラセミ基質の半量がアキラルなケトン体となり理論的にキラルアルコール体の収率は50%を超えることがない.しかしながら,本基質の場合はキラルなバックグランドを持つので成績体の双方がキラリティーを持ち,2種のキラル体が得られることになる.事実,最高96%eeのアルコールと54%eeのケトンを与えた.次いで,酵素法が無力であるα-位に各種置換基を持つ基質について検討した所,アルコール体及びケトン体共に,さらに高いエナンチオ選択性を示し実用的に利用出来るレベルに達した.無置換体は光学純度の点で酵素法に劣るものの酵素反応が進行しがたいα置換体の分割法を確立し,目的を達することが出来た. 本反応によって得られた(-)-アリルアルコール体の活用の一端として海洋産海綿の産生する抗腫瘍性セスキテルペン(+)-curcuphenolならびに(+)-α-ヒドロキシメチルケトン体の活用の一端としてStreptomyces eurythermusの産生するグラム陰性および陽性菌に活性を持つ(-)-pentenomycin Iのジアステレオ制御合成に適用することが出来た.さらに,トリキナン型セスキテルペンである(+)-arnicenoneの最初のジアステレオ制御合成を達成し,その絶対配置を明確にした.
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