研究概要 |
本研究では,近年,抗腫瘍活性や抗ウイルス活性等,多様な生物活性が見いだされてきたタンニンを中心とする天然ポリフェノールについて,そうした活性の基礎となる生体高分子との相互作用の検討の一環として,ペプチドとの会合について検討を加えた. まず,(+)-catechinや(-)-epigallocatechin gallate(EGCG)のような低分子ポリフェノールを使用し,種々のペプチド・タンパク質との相互作用について,NMRスペクトルにより検討を行った.その結果,EGCGとウシ血清アルブミン(BSA)の組合せの場合,^1H-NMRの測定時に,比較的低濃度でもピークの幅広化が認められた.他方,各種ポリフェノールの共存下に,cytochrome cのCDスペクトルには可視領域に明瞭な変化が観測された.この変化は,紫外-可視スペクトル上でのソーレー吸収帯の変化を伴うことに基づいて,ポリフェノールによるcytochrome cのヘム部分の還元に由来するものであることが明らかになった. また,サイズ排除クロマトによりEGCGとBSAの会合体の形成の観測が可能であることを見いだした.このような会合体の形成は,pentagalloylglucose,加水分解性タンニン2量体のcornusiin Aやoenothein B等についても認められた.このようにして,EGCGとBSAの組合せの場合,その会合体のサイズは約30万ダルトンであることをも明らかにした.さらにEGCGについては,ヒト血清アルブミンとの間にも,同様の会合体の形成を認めた. 他方,以上のような知見の応用により,抗生物質耐性菌に対する抗菌活性,および耐性抑制活性を有する化合物を効率的に見いだすことができた.また,この過程でマメ科植物に由来する生薬から新たなポリフェノールを開拓することができた.
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