研究概要 |
抗腫瘍活性イソキノリン系海洋天然物エクチナサイジンの全合成経路の開発に際して、特徴的なA環置換様式の構築手段としてサフラシン抗生物質にも含まれるABC環構造単位の合成経路の確立を目的とした研究を展開して以下に示す研究成果を得た。 1 従来、最終工程においてフェノール性水酸基の導入を検討してきたが、いずれも低収率であった。そこで、酸触媒Baeyer-Villiger反応を鍵段階とする同官能基の構築手段を開発した。さらに、骨格形成においてブロム原子で反応活性部位をマスクすることにより位置選択的な閉環反応を可能とする手法の開発に成功した。(Heterocycles, 1999, 51(1),9-12) 2 実際の全合成に上記経路は適用困難であることから、イソプロピル基をフェノールの保護基として利用して特徴的なA環置換様式を保持したベンズアルデヒド誘導体の大量合成法を確立した。(Synth.Commun., 2000, 30(4), 0000) 3 ベンズアルデヒド誘導体から15工程、総収率27%でABC環モデル化合物へ変換経路を開発した。この経路はすべての段階において唯一の生成物が得られるために、繁雑かつ不経済なカラム操作を必要としないものであり、従来の経路に比較して約3倍の総収率を実現する優れたものである。(Chem. Pham. Bull., 2000, 48(10), 0000) 4 すでに、我々はA環のフェノール性水酸基を持たない光学活性サフラシンの全合成を報告しているので、今回の研究成果を適用することによりその全合成は達成できるものと考えている。(Tetrahedron, 1995, 51(30), 8213-8230) 一方、エクチナサイジンのE環置換様式を保持したベンズアルデヒドの供給手段を確立した。(J. Dhem. Soc.Perkin Trans.1.1997, 53-69)現在、以上の研究成果を集約することにより本系天然物の全合成研究をさらに展開している。
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