研究概要 |
1.トリフルオロ酢酸(TFA)中での硫酸エステルの脱硫酸化反応と保護基の脱保護反応について詳細な速度論的解析を行った。低温下でのTFA処理が硫酸化チロシンの損傷を最小限に抑制できることを芳香族硫酸エステルの脱硫酸化メカニズムをもとに理論的に説明した。 2.酸に鋭敏なクロロトリチル樹脂を固相担体に採用し,さらに1.の低温下でのTFA処理(S_N1型脱保護反応)を鍵行程とする硫酸化チロシン含有ペプチドの簡便な固相合成法を開発した。本合成法を用いて,現在まで報告例のないBig Gastrin-IIおよびCholecystokinin(CCK)-39の直接的な固相全合成を達成した。 3.2.の固相合成法をさらに展開した固相セグメント縮合法のアプローチにより,Big Gastrin-IIおよびBig Gastrin-Gly(硫酸化体)の合成を達成した。 4.硫酸化チロシン含有ペプチドのマススペクトル(気相)および酸溶液中での挙動を詳細に解析し,強アニオン性の硫酸エステルを含む硫酸化チロシン残基が,カチオン性の官能基を含むアミノ酸残基(特にアルギニン)と分子内あるいは分子間でイオン対を形成して自己安定化する機構が働くことを明らかにした。 5.2.の硫酸化チロシン含有ペプチドの簡便な固相合成法とチオエステルセグメント縮合法を組み合わせたアプローチにより大分子型のCCK-ペプチド(CCK-39およびCCK-58)の合成を行い,それらの生理活性を明確にした。 6.硫酸化の修飾を受けたペプチド性貝毒:α-コノトキシンEpIの化学合成を目的として,オキシトシン(硫酸化体)をモデルに硫酸エステルの損傷を伴わないCys保護基の除去法および引き続くジスルフィド形成反応を検討した。さらに,Cysの保護基にTrityl基を採用し,1.の酸脱保護法を活用してα-コノトキシンEpIの合成に成功した。
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