研究概要 |
海洋に棲息する菌類の産生する抗腫瘍性物質の発見を目的として,種々の海洋動植物より分離された菌類の細胞増殖阻害代謝産物について検討し,27種の細胞増殖阻害物質を含む40種の新規化合物を単離し,これらの化学構造を決定した.また,ジムナスタチンIの全合成を達成した.さらに,ジムナスタチンAが種々の抗がん剤スクリーニングで効果を示し,有望な化合物であることが判明した. 1.ムラサキウニ由来アスペルギルス属真菌から6種の新規化合物(アンスカラリンA-F)を単離し、これらの絶対立体構造を決定した.これらのうち,4種(A-D)が有意な細胞増殖阻害活性を示した. 2.緑藻ボウアオノリ由来ペニシリウム属真菌から細胞増殖阻害物質として10種の新規化合物(ペノスタチンF-O)を単離し,立体構造を決定した. 3.アメフラシ由来ペリコニア属真菌から9種の新規物質(ペリコシンC-F,ペリコールB-D並びにマクロスフェライドI及びL)を単離し,これらの立体構造を決定した.これらのうち,ペリコシンD並びにペリコールC及びDが有意な細胞増殖阻害活性を示した. 4.ダイダイイソカイメン由来ジムナセラ属真菌から15種の新規化合物(ジムナスタチンD-K、ジムナステロンA-F並びにダンカステロン)を単離し,これらの立体構造を決定した.これらのうち,ジムナスタチンD、E,H並びに ジムナステロンA,Fを除くすべてが有意な細胞増殖阻害活性を示した. 5.ダイダイイソカイメン由来真菌の細胞増殖阻害物質ジムナスタチンIの全合成を達成した. 6.アメフラシ由来真菌の抗腫瘍性物質ペリコシンBの6位のエピマーを合成した. 7.すでに単離されていたジムナスタチンA及びBがin vivoにおいてマウスP388による制がん効果を示すと共にタキソール様のチュウーブリン阻害活性を示した.また,ジムナスタチンAはトポイソメラーゼ及びプロテインキナーゼの阻害活性を示すと共に細胞接着阻害活性をも示し,今後の展開が期待される.
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