研究概要 |
ホスホトランスフェラーゼ型のリボ核酸分解酵素類において、RNase A family, T1 familyに属する塩基特異的酵素による「厳密」な塩基認識機構は、種々の複合体のX線結晶構造解析等によって詳細に明らかにされている。一方、本研究のテーマであるRNase T2 familyに属する塩基非特異的酵素に関しては、4種類の酵素の立体構造(RNase Rh, RNase MCl, RNase LE, RNase Le2)が報告されているが、同familyに属する酵素による「柔軟」な塩基認識機構に関しては、未だ不明な点が多い。そこで、本研究において、我々は、塩基非特異的酵素による塩基認識機構を明らかにするため、RNase T2 familyに属するトマト由来リボ核酸分解酵素RNase LEおよびシイタケ由来RNase Le2と種々のヌクレオチドとの複合体のX線結晶構造解析を行った。特に、前者においては、基質類似体であるdeoxyguanylyl-3',5'-deoxyguanosine、即ちd(GpG)との複合体結晶の構造解析を行い、後者においてはd(GpG)およびd(ApA)との複合体結晶の構造解析を行った。精密化の結果、RNase LEの複合体結晶の解析により、5'-側グアニン塩基(G)はB1サイト、3'-側のグアニン塩基(G)はB2サイトにproductive binding modeで結合していることが判明した。本酵素の活性に関与するサイトであるB1、R1、P1、R2、B2各サイトの詳細な構造が明らかとなった。当初の方針としては、d(GpG)のような基質類似体よりも、より本当の基質に近いGpcG(リン酸基の酸素原子がメチレン基で置き換わった化合物)のようなホスホネートの合成も目指したが、いまだ合成には至らず、別種の基質類似体である2'-deoxy-2'-fluoroguanyl-(3',5')-guanosine(GfpG)の合成に成功した。この基質類似体とRNase LEとの複合体結晶を調製してX線回折実験を現在行っているところである。ホスホネートの合成はさらに追求していく予定である。
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