研究概要 |
ヒトを含む野生動物におけるPCB及びその残留性代謝物の体内分布、実験動物におけるPCB代謝物の挙動及び生体作用に関して、次のような知見が得られた。 (1)単一PCB(#105,#118,#126,#138,#146,#167,#187)をラットに投与すると、血液中に特定の構造を有するOH-PCB(特に3,5-位に塩素を有する 4-OH体)が母化合物より高濃度で残留することが分かった。 (2)カネクロール-500(PCB混合物)をラット、ハムスター、モルモットに投与した場合、その代謝能(PCBからOH-PCB, MeSO_2-PCBへの代謝)はモルモット>ラット>ハムスターの順に大きいことが分かった。モルモットでは、血液中に#99,#118由来の3-OH-PCBの残留が顕著にみられたが、ラットでは4-OH体のみが選択的に残留した。一方、肝臓中では#101及び#132由来の3-及び4-MeSO_2-PCBの残留に大きな種差が見られた。 (3)ヒトの血液、アザラシ及びイルカの肝臓中からPCB及びPCB代謝物を単離し、その化学構造と濃度を明らかにした。MeSO_2-PCB/PCBの残留比は、アザラシで1/10,ヒト及びイルカで1/100を示した。ヒト血液中の水酸化体はPCBの約1/100レベルで、10種以上の異性体構造が推定された。 (4)ヒトに残留してるPCBメチルスルホン体9種をラットへ投与すると、血液中の甲状腺ホルモン(T_3, T_4)レベルの変動が見られた。T_4レベルの低下は甲状腺刺激ホルモンの増加をもたらした。これらの結果から、MeSO_2-PCBは内分泌かく乱作用を有することが示唆された。 以上の結果から、ヒトにおけるPCBの代謝、特に残留性代謝物の分布と内分泌かく乱活性を追跡するための基礎データが得られた。
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