研究概要 |
日本は人口の四分の一が高齢者という,人類史上未曾有の高齢化社会に向かいつつある。日本の医療の現状は医療供給体制が未分化であり,世界一在院日数が長いという問題があり,この是正を迫られている。医療制度改革では,医療資源の効率的な配置及びサービスの効果的な提供を目指し,医療施設の体系化が図られている。現状では,高度医療機関での治療を負えた患者が,必ずしも地域のかかりつけ医や療養型病床群等へ円滑に戻されているわけではない。高度先進医療を行う特定機能病院である東京大学附属病院での治療を終了した患者が,地域において継続的かつ適切な医療サービスを受けるための課題とその解決の方向性を検討することを目的として研究を行った。東京大学附属病院では,平成9年度から,院内処置にて中央診療部門に医療社会福祉部を設置して,退院援助を行ってきた。退院援助の依頼症例の約34%が,がん患者である事が特徴である。特定機能病院における退院援助には,在宅ホスピスケアの充実が必要である。7都県23区41市町に住所を有する症例の援助を行ない,67訪問看護ステーション,63病院と連携を行った。病院内の窓口を一本化することにより,訪問看護ステーションとは,最大で8例の症例を依頼し,67訪問看護ステーションと緊密な連携を取ることが出来た。また訪問看護ステーションを利用し,在宅療養を行う症例は,症例数として2.6倍,依頼症例に対する割合も約2倍になった。特定機能病院に退院計画を専門に行う部門を設置し,多職種の専任スタッフを配置して全診療科の入院患者を対象に退院援助を行うことにより,患者・家族が満足する円滑な早期退院が可能になった。これにより,平均在院日数が短縮し,特定機能病院の高度先進医療を,国民に広く効率的に提供することが可能となると考えられる。
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