研究概要 |
鹿児島県北西部地震および出水市土石流災害に関連して発生するPTSDに関して実態を調査し,免疫機能の変化について検討した。北西部地震においては,小学生,中学生,高校生を対象とした調査では,震災3カ月後に10.2%にDSM-IV修正版でPTSDにスクリーニングされた。6カ月後の調査時には4.5%に減少し,一年後の調査では3.1%,一年半後は1.8%,二年後は1.8%であった。一方,成人では6カ月後に6.5%,一年半後には4.2%であった。したがって,児童生徒の方が低頻度であり,児童生徒の心の傷の回復力は成人に比べて高いことが示唆された。地区別での検討からは,震度だけでなく,地区のPTSDに対する取り組み特性,余震の頻度などで経過が影響されることが示された。 出水市土石流災害においては,災害発生3カ月後には28.8%がPTSDとしてスクリーングされ,その後の調査では20%前後で推移し2年後も同様の頻度でみられた。被害状況の大きさや死者が出ていることから,地震に比べて尾を引いていると考えられた。免疫機能については16名においてCD4,CD8,CD56,NKCCを測定した。被災3カ月後の調査では,16名中3名(19%)のNK細胞活性が正常の-2SD以下であった。これは-2SD以下の度数が約2.5%であることを考えると,7.5倍と高値であった。一方,CD4,CD8,CD56は増加する傾向がみられ,CD8およびCD56は不安の強い者で高値を示した。PTSDと細胞性免疫能の関連については否定的であった。しかし,NKCCの低下していた3名にNKCCの結果に基づいて個人面接をすると,災害発生後フラッシュバック体験をしていたことや雨音に敏感になって不眠であったことなどと語るようになった。フォローアップした結果では,CD8およびCD56は減少することが示されたが,対象者数が少なく決定的なことは言えないと考えられた。
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