研究概要 |
【研究目的】術後の全身シャワー浴が及ぼす生体負担について,エネルギー代謝量,血圧,心拍数,鼓膜温を指標に,術前のシャワー浴と術後初回シャワー浴の比較,および対象者と同一年代の健康者をコントロールにして比較検討した。【研究方法】呼吸器・循環器疾患を有しない婦人科領域の開腹術を受ける患者6名を対象に,術前のシャワー浴時(術前患者群)と術後8日目以降の術後初回全身シャワー浴時(術後患者群)に測定した。測定ポイントは,安静仰臥位30分後(安静),シャワー浴後病室に戻りベッドに仰臥位になった直後(直後)、および20分後(20分後)とした。シャワー浴は病棟の浴室で実施し,その方法は洗髪を行わないことのみを統一し,その他の方法は対象者の習慣に準じ,対象者は心地よいと感じるペースで行った。コントロールの健康な女性7名(平均年齢40.57±3.57歳)(健常者群)の測定は,実習室内の浴室を使用し,測定内容およびシャワー浴の方法は対象者と同一にして実施した。【結果・考察】術前患者群は健常者群と同じような平均値推移および各測定ポイント間での変化量を示し,両群間に差異はなかった。また,術後患者群の平均値推移においても術前患者群と同じ推移を示した。術後患者群の各測定ポイント間の変化量では,心拍数の安静時から直後にかけての増加量が術前患者群に比べ有意に少なかったが,このことは,シャワー浴動作に伴う運動量が術後患者群で減少していたことに起因していると考えられ,また心拍数以外の変化量は両群間に有意差が認められず,術後患者群は変化量においても術前患者群と同じ傾向を示す群であることが推察された。したがって術後8日目を経過した時点での初回全身シャワー浴は,術前のシャワー浴時と差違のない負荷であることが示唆され,創部の保護を考慮すれば術後8日目よりも早い時期にシャワー浴を実施することが可能と考えられる。
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