研究概要 |
本研究は,在宅ケアを推進する上で,療養者の居住環境が療養生活の質(Quality of Life,QOL)と密接に結びついていることを前提に,在宅療養における居住空間の形成に関する基礎的な資料を得ることを目的として,平成10〜12年度の3年間にわたって行った。 平成10年度の調査では,自立度の低い療養者は1日平均10時間19分就床していること,そのために朝食の摂取時間が遅くなっていることが把握できた。平成11・12年度の調査では,在宅療養者はある程度外出していても活動量そのものが少ないこともあり、健康な高齢者ほどメリハリのある睡眠・覚醒リズムを呈していないこと,居場所が寝室になっていたり,安楽な椅子やソファのない居住環境で過ごしている療養者は1日の大部分をベッド上で過ごしており,総就床時間が非常に長く,昼寝の時間や頻度も多く,不規則な睡眠・覚醒リズムを呈していた。一方、健康な高齢者は概ね正常な睡眠覚醒リズムで生活しており、睡眠時間はそれほど長くない場合でも、入眠潜時が少なく効率のいい睡眠をとっていた。 以上のことから,自立度が低くても臥床しないで生活を送ることのできる居住環境を整えることが,メリハリのある規則的な生活を生みだし,そのことが結果的に療養生活のQOL向上に関与していると考えられた。 今後は、在宅療養者の居住環境と生活リズムとの関係を、「人間-環境系」の視点からさらに深めていく予定である。
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