研究概要 |
本研究は、未熟児(低出生体重児)を出産した母親とその児について、1)分娩直後から母親退院までの期間の母子関係に対し、児だけ入院期間中の母子関係がいかに変化したか、その過程を明らかにする、2)児に対する父親の養育行動が、母子関係に与える影響を明らかにする、3)児の退院後の母子関係の変化と、家庭内での母子関係を阻害する諸要因を明らかにすることを目的とした。 I.研究方法 調査対象は、岡山大学医学部附属病院で1,500g以下の未熟児を出産した母親とした。倫理的配慮として研究目的を説明し、同意の得られた者に対して調査を行った。調査内容は、児に対する行動(行為とことばかけ)、関心、感情、理解、不安・心配、生活状況等について、半構成的面接法と観察を行った。調査時期は、1)出産後から母親退院まで、2)児だけ入院中の面会時、3)児退院後1年間(1週間,1ヶ月,3ヶ月,6ヶ月,9ヶ月,1年)とした。調査期間は平成11年1月〜平成13年2月である。 II.結果 今回、13事例の結果を検討した。11事例(85%)が他の医療機関からの緊急搬送入院である。早産になった原因は、前期破水や妊娠中毒症が多く、11人(85%)が緊急帝王切開術である。 1.出産直後から母親退院まで:1)初回面会時12人(92%)が児を小さいと感じ、児に否定的な印象・感情をもった者は9人(70%)である。2)その衝撃の大きさがその後の面会行動に影響を及ぼしている。 2.児のみ入院中:1)退院後は、児との距離感や寂しさを感じた者は12人(92%)である。2)寂しさの解消や子供の成長を確認することが、母親の面会への動機づけになっている。3)児が保育器から出ると母親は児に対する愛着がより深まり、児への接近行動が促進される。4)保育器外で児を抱くこと、授乳行為や直接母乳を行うことで、母親であることや母親役割を実感し、児への関心が深まる。 3.児退院後1年間:1)児が退院後、児の発育や発達について過度の不安を抱えている者が多い。2)過度に育児不安が強く、児への過度な心配・不安をもつ場合、母親は子供や育児に対し消極的な感情を持ちやすい。3)夫の無理解や非協力な場合は、母親は子供や育児に対し消極的な感情を持ちやすい。
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