研究概要 |
Fiske and Neuberg(1990)が提唱した連続体モデルに基づき、競技者の対人認知について明らかにし,相手を効率的に把握するための対人認知的方略を探るために、対人認知過程に関する最近の研究を概観し、実験及び調査によって競技者の対人認知過程の各過程について,また低次から高次への移行,競技者個人や競技レベルによる認知様式の差異等について検討した。さらには,スポーツや身体活動をともに行うこと,あるいは運動指導が対人認知過程や対人関係に及ぼす影響についても検討した。 本研究の結果から,対戦相手を的確に把握し適切な対処行動をとるための対人認知の方略が提言された。まず,対戦相手認知のための注意資源を最大限増やし、且つ、できる限り資源を要しない認知様式で最低限的確に対戦相手を捉えることが重要である。そして,対戦相手認知のための注意資源を増やすためには、特に対戦相手を正確に捉えることと直接関連した目的を持つことが必要である。第一印象でほとんど自動的に、対戦相手の強さが把握されるため、相手のことについて考えないようにするよりは、この第一印象と一致しない情報を積極的に集める必要がある。また,情報を分析するための時間的な余裕がある状況で、信憑性の高い直接的な情報をなるべく多く収集して統合しておき、認知的活動に多くの注意を割けない状況になる以前に、的確な全体像を把握しておくべきである。その際に相手に当てはめるカテゴリーは競技者自身が採りうる対処行動対応しているべきである。熟知した相手であっても,そうしたカテゴリー間の類似性や相違点を把握し体系化しておくことが必要である。それによって、相手の個々の反応と照らし合せて、相手の全体像を効率的に修正したり、新たな全体像を確立したりするのが容易になる。
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